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これって友情?恋…?女同士の友情と恋愛の境界線の曖昧さを描いた「降っても晴れても」(藤村真理)

世間では「きょうは会社休みます。」がヒット中…ですが、時代に逆行しているこのサイトでは、藤村先生の代表作のひとつ「降っても晴れても」をピックアップ。地味ですが、学生時代にタイムスリップしたような気になる本当に良い作品です。

連載開始が1993年なのでもう20年以上も前の作品ですが、今でも印象深いのはいわゆる男女の恋愛ではなく女同士の友情と恋のボーダーラインがテーマとなっているからでしょうか。
シリアスで、切なくて、でも優しい。派手さは無いながらも、藤村作品の良さがつまった名作です。

女子高を舞台に描かれる、先生への憧れ、同い年の男の子へのとまどい、そして女同士の友情…。

本作には、「健全」ではないけど、誰もが共感できる、懐かしいようなこそばゆい感情が眠っています。そしてその描き方がまた上手い。

女子高に通う凪は、明るく真っ直ぐな少女。転校生の比呂という女の子と仲良くなる。女性らしくて優しい比呂に凪は惹かれていくが、比呂は凪に強く執着してくるようになる。次第にクラスから浮き始める2人だが、どうしても比呂を嫌いになれない凪は、比呂の弱さに向き合おうとするが…。

教室の中での女の友情は、時に不思議な方向に崩れていく。

友達を独り占めしたい。自分だけを見て欲しい。友達が大好き。

女同士の恋…レズ…百合…、どれもたぶん違う。

男女の恋愛とは違った、この友情とも恋ともつかない、感情。同性の友達に対する独占欲が膨れ上がって、擬似的な恋愛に近い感情になっていくような感じ。この感情っていわゆる「女子あるある」なんだろうけど、言葉にするのがなかなか難しい。そんな思春期特有の少女の不安定な内面の描写が非常に細やかに描かれています。(藤村先生は女子高の出身だそう)

比呂は、今で言う立派な「メンヘラ」ちゃん。90年代はそんな言葉はなかったけどね。依存心が強く、脆くて、危うげで、孤独な美少女。
凪を好きなあまりどんどん行動はエスカレートしていき、壊れていく。重いです怖いです、比呂。

凪と比呂は近くにいすぎて、距離感がわからなくなってしまっていく。凪のように「思われる側」の方も、比呂のように「思う側」の方も、結局どっちも辛いだけの状態に陥っていく。

最後、凪と比呂はどうなるのか。
少々意外なオチになっていますが、振り返るとやっぱりあれは学生時代特有のものだったのかと思わずにはいられない終わり方になっているところがすごい。

「きょう会社~」では明るい恋愛を描いているけど、暗めで湿度が高い切ない系の話が多いのも藤村先生の持ち味。
本作も、シリアスだけどドロドロとも違う、一言で言うと「綺麗」な印象か。後味を引く不思議な魅力を持っています。

そして、けして洗練されているわけではないものの、嫌味がなく素直な可愛らしさがある絵柄が作品の雰囲気にとても合っている。
凪も比呂もすごくかわいらしく、正ヒーローなのに比呂に食われて印象の薄い凪の彼氏(常磐くん)もちゃんとかっこいい。
藤村先生の絵は本当にかわいい。ほんわりしていて、柔らかい空気感がある。

女性同士の恋を描いた隠れた秀作として、機会があればぜひ読んでいただきたいです。かつて凪のような思いをした子も、比呂のように間違っちゃった子も、どちらもきっと共感できるのは違いないから。

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