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「”恋愛”漫画」ならぬ「”部活”漫画」 眩しいほどに青春だ 『青空エール』(河原和音)

  • 青空エール 1 (マーガレットコミックス)
  • 青空エール 2 (マーガレットコミックス)
  • 青空エール 3 (マーガレットコミックス)
  • 青空エール 4 (マーガレットコミックス)
  • 青空エール 5 (マーガレットコミックス)
  • 青空エール 6 (マーガレットコミックス)

同じ別マで連載中の「君に届け」を初めて読んだ時もそのピュアぶりに驚嘆したのですが、さらに輪をかけて「ザ・青春」を描いているのがこの「青空エール」。もうタイトルからしてやばいです。青い空と白球と応援する少女の絵柄が瞬時に頭に浮かびます。

どっこい高校野球のマネージャーと部員の恋話かと思いきや、主人公の部活は「吹奏楽部」。そして主人公の恋のお相手が「野球部」という設定となっています。

恋愛をメインに描いていく少女漫画の中で、本作は恋愛4・吹奏楽6という割合で部活パートが多め。

恋愛好きな方には物足りないかもしれませんが、学生時代何かに没頭した人ならもちろん、そうでない人も胸が熱くなる、まさに青春のきらめきを凝縮した作品となっています。


[ずっと自分の靴ばかり見てた。だけど君が信じてくれたから上を見れた。

見上げた空は青かった。」

TVの甲子園中継で、アルプススタンドで野球部を応援するブラバンを見てから、ずっとあこがれた小野つばさ。彼女は夢を叶える為に吹奏楽と野球の名門「白翔高校」に入学し、吹奏楽部の門を叩きます。

しかし全国レベルの吹奏楽部の敷居は高く、ただでさえ弱気で初心者のつばさは入部する前から心が折れることばかり。

それを励ましてくれたのは、同じクラスの野球少年、山田大介

つばさの夢を知った大介は、つばさの心の支えとなります。
「甲子園で小野が俺の事を応援してくれ」という大介に励まされ、つばさはあきらめずに吹奏楽部への道を進んでいくのです。

この作品の見どころは、なんといっても学生時代の思い出がよみがえる、厳しい部活動の描写。つばさが入部した吹奏楽部は、普門館(野球でいう甲子園)を目指す、名門中の名門です。体育会系の部活に所属していた人なら身に覚えもあるだろう。先輩の命令は絶対、泣く子もビビる縦社会。

部員同士がライバルで、皆少しでも上を目指そうとしているので、いろんなことにがんじがらめな様子。大人と違って余裕がないので、「ダメ」って言ったら絶対「ダメ」みたいな、そんな若さゆえの視野の狭さ。

それでもやっぱりマシンじゃないので、感情のままに動いた行動が、他人の心を震わせることもある。(その行動力も若さから来ているものなのだけど)。この少女たちの頑張りがいじらしい。泣けるエピソードも満載です。

つばさは完全初心者なので、周りのレベルに全くついていけず。それどころか、時には迷惑をかけることも。

「小野さんに合わせていると練習ができません。外してください。」
「なんのためにいるの?」

漫画だからフィルターがかかるけど、実際にこんな言われ方したら社会人でも泣くぞ…。

しかし、心に思うことはあってもつばさはくじけない。この辺の彼女の長所は、素晴らしいの一言。

まあ根っからの芯の強さもあると思うけど、大介が弱音をはかずに頑張っている姿に大きな影響を受けているのも事実で、一方の大介もつばさの根性に心から尊敬している様子。

知らず知らずにお互いがお互いを成長させていき、どんどん信頼関係が育っていく2人ですが、もちろん「恋心」もしっかり育っていきます。

山田少年は、野球部坊主にガタイのいい体。ポジションはキャッチャー。この少女漫画のヒーローらしからぬルックスは、あくまで部活メインで描きたいんだという作者の想いの表れでしょうか。

彼は、つばさの話もちゃんと最後まで聞いてあげて、いつもポジティブシンキングな回答をくれる。
正直、好きな人に言われた言葉ならそれが筋違いでもなんでも嬉しいのが女子というものですが、山田少年の台詞はちゃんと心が通っていて筋も通っています。

夏に読むのがぴったりな、青春漫画「青空エール」。疲れた心が癒されます。
ただあまりにも眩しすぎる作品ので、注意。

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