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目が覚めたところは天国か地獄か 傑作SFドラマ 『7SEEDS』(田村由美)

ストレスだらけの日常から離れて、非日常感をたっぷりと味わいたい時もある。そんな時に漫画は本当に便利なツール。家から出ることなく別世界へトリップ、退屈な週末がドラマチックに変わる瞬間。

そしてどうせトリップするなら、なるべく臨場感があって、魂の燃えるような漫画が好ましい。でも熱いだけじゃなくて、ちゃんと恋愛にも萌えたい泣きたい。はい、そんなわがままに応えるのが田村由美の作品です。

大きい目にカラフルな表紙。ちょっとバタ臭い少女漫画風な第一印象、だけど中身は骨太でストーリー重視の超展開ときた。熱いストーリーと人間ドラマのバランスも良く、ハリウッド映画並みの壮大なスケールを求めている人にはぴったりの作風。「BASARA」は講談社漫画賞も受賞した作者の代表作ですが、本作もそれに負けず劣らずの勢いを持っています。

目が覚めたところは天国か地獄か 作者渾身の傑作SF長編

いつも通り夕飯を食べて自分のベットで眠りについた、岩清水ナツ。目覚めるといつのまにか荒れ狂う嵐の海の中、救命ボートの上にいた。見知らぬ男女と共に漂着した先は、不気味な無人島。状況が全くわからないまま、島でナツ達のサバイバル生活が始まる。

09
”目が覚めたらいきなり海の上でした
田村由美『7SEEDS』(小学館)1巻より

本作に関しては、できればネタバレなしで最初から読んだ方が面白いと思いますが、ここではいちおうこの漫画の前提となる設定を説明します。

なんでナツ達は、突然無人島でサバイバルをするはめになったのか。

これは政府が計画した壮大なプロジェクト。近い将来に、巨大隕石が衝突し世界は滅びてしまうことを予測した科学者達。人類滅亡を恐れた各国の政府は、自国民の中から健康で優秀な遺伝子を持つ若者を選び、地球が回復した後の未来で目覚めるよう冷凍保存することにしたのだった。

主人公達が「昨日までは普通の日常だった」と思っている時代ははるか彼方の何百年何千年も前に滅んでいて、今いる荒れ果てた土地は、未来の日本。彼らは、未来で生きて生活を安定させ、子を育み、再び人類を繁栄させるよう未来を託された選ばれた「7SEEDS」=種だった。

この設定がなかなか面白い。いつか自分の家へ帰ろうと希望を捨てずに生きてきた主人公たちに、もうとっくに世界は滅びてますよという容赦ない現実。
しかも放り出されたのが文明が退化したひどい世界。そんな中手探りで必死で生きながらも「子孫繁栄」という命題を突きつけられたうら若き若者たちの悲劇的な状況に、ただただエールを送りたくなります。

田村作品はどんどんキャラの視点が変わっていき、それにつれてエピソードも広がっていく。まだまだ書き足りないものがいっぱいあるんだろうなと感じずにはいられません。失礼ながら作者のお年はもう若くないはずなのに、これだけ勢いのある長期連載をできる体力・精神力には本当に「感服」の一言です。

現実を忘れて別世界にどっぷり浸かれるというのが漫画の楽しみ方だとすると田村作品はその点ではパーフェクトな漫画。それに加えてキャラクターが魅力的で、心に残る台詞がたくさんあって、恋愛要素も手を抜くことがない、これで中毒にならないほうが無理ってものです。

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